パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

2017年現在において、果たして血液型性格診断をニセ科学と呼んでよいのか?

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どうも、あんきろさんです。

良くも悪くもみんな大好き血液型性格判断ですが、朝日新聞の記事で「ニセ科学」と断じられていました。

www.asahi.com

でも血液型性格診断は本当に「ニセ科学」と呼んでいいのでしょうか?

まずは血液型性格診断について軽くおさらいしてみましょう。

まず血液型ですが、人間の血液の中に大量に含まれる赤血球という細胞の表面に発現している抗原によって規定されています。
最もメジャーな血液型の分類であるABO式の血液型では、A抗原のみを持っていればA型、B抗原のみを持っていればB型、両方持っていればAB型、どちらも持っていなければO型になります。
血液型性格診断とは、ある人がこのABO式の血液型のいずれであるかによって、その人の性格を推測できるという画期的な考え方です。

ただ、画期的であるがゆえに、「なんで赤血球のタイプで性格が規定されるんだ」とか「血液型の決めかたはABO式の他にもいっぱいあるんだけど・・・」とか「人間の性格が4つに分類できるのか?」とか「そもそも性格って何よ?」とか至極真っ当なツッコミを受け、論拠となったデータの正当性や再現性にも乏しいため、長らくニセ科学の代表格として、みんなに批判され、そして愛されてきました。

でも、血液型性格診断は本当にニセ科学と呼んでよいのでしょうか?

それを検討するに当たって、まずは定義の確認です。
Wikipediaでは「ニセ科学」という項目はありませんが「疑似科学」がほぼイコールであると考えられますので、それを引用します。

疑似科学(ぎじかがく、英: pseudoscience, pseudo-science)とは、うわべだけの科学や、誤った科学のことであり、科学的方法に基づいていると誤って考えられたり、あるいは科学的事実だと(間違って)位置付けられてしまった一連の信念のことである。

果たして、血液型性格診断がこれに当てはまるでしょうか。
上の朝日新聞の記事で書かれているように、血液型性格診断が提唱された当初は「科学的方法に基づいていると誤って考えられた」と思われますし、考え方が広まってしばらくの間(そして結構最近まで)は「科学的事実だと(間違って)位置付けられてしまっていた」かもしれませんが、これだけ情報化社会が進んだ2017年において、血液型性格診断が科学的事実に基づいていると本気で信じている人がどれだけいるでしょうか?

血液型性格診断が(ある程度)正しいと考えている人はそれなりにたくさんいると思います。
しかし、それは血液型性格診断に科学的根拠があるから信じているわけではなく、自身のこれまでの経験によって、なんとなく正しそうと思っているから信じているだけだと思います。
それは「血液型性格診断」がしばしば「血液型性格占い」と言い換えられることからもわかります。
占いが科学であると主張される方とはまたちょっと別のところで議論しないといけないと思いますが、ここまでくると、ほぼ科学の皮は被っていません。
「ニセ科学」というよりは、「黒猫が前を横切ると不幸になる」とか「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」とかいったような「迷信・言い伝え」といったものに分類する方がしっくりきます。

そして、さらに言うなれば、血液型性格診断が正しいと主張している人の中で、それを科学的に立証しようとしている人がどれだけいるでしょうか?
僕は血液型性格診断の世界には疎いのでよくわかりませんが、本気で血液型と性格が関連していると科学的に証明しようとしている科学者や、本気で科学の皮を被って血液型性格診断で一儲けしようとしている詐欺師ってほとんどいないんじゃないでしょうか。

例えば、僕が医学博士という立場で、

「ABO式血液型を規定する遺伝子は第9染色体上にあるが、第9染色体上のこの遺伝子のすぐ近くに、人の性格に影響を与えると考えられるANKYLOという遺伝子を発見した。血液型と性格には直接の因果関係はないが、血液型の遺伝子とANKYLOという遺伝子はほぼ同じ動きをするため、結果的に血液型と性格は相関するものと考えられる。過去の研究で因果関係が立証できなかったのは、性格というあやふやな物を評価する基準がなかったということと、性格は後天的な影響も多分に受けるために十分な評価ができなかったためと考えられる。この度、心理学の偉い先生と組んでそのあたりを上手に評価できる指標を作って再度検討を行ったら、しっかり相関関係が見られた。
ちなみに、このANKYLOという遺伝子の近くにはSAURUSという遺伝子もあって、この遺伝子は癌のなりやすさと相関していることがわかった。もちろんこのSAURUSも血液型と相関していて、A型の人は癌になりやすいので、A型の人はみんな僕が作った奇跡の水を飲んで癌を予防しましょう。奇跡の水は500mlで1000円です。」

とかやり出したら完全にニセ科学ですが、このご時世において、血液型と病気のなりやすさならともかく、間に性格診断を挟んでそれをやろうという人はいないと思うので、もう血液型性格診断はニセ科学と呼ぶに値しないと思います。
プレイヤーなきニセ科学は存在しません。

ということで、結局何が言いたいかと言いますと、朝日新聞様を始めマスメディアの皆様におかれましては、今さら血液型性格診断を「ニセ科学」として血祭りにあげるのではなく、今この時もどこかで誰かを食い物にしているであろう本物の「ニセ科学」をマスメディアとして断罪していただきたいものです。
血液型性格診断によって不快な思いをされている方もたくさんいらっしゃるとは思いますし、そういった方ができるだけ不快な思いをしないようにこういった啓発を行うの重要とは思いますが、本物のタチの悪い「ニセ科学」に食い物にされているのは、病気であったり、障害を抱えていたりするような立場の弱い方です。
そういった方を守るのも、メディアの重要な役割ではないのでしょうか。
デカデカと「これで医者に見放された癌が治った」とかいった広告を載せたり、今さら血液型性格診断をとやかく言ったりする前に、他にやるべきことがあるんじゃないかと私は思うのですがいかがでしょう。

 

4/28 盛大に燃えているので追記しました。

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