パパのお父さんはへっぽこ小児科医

へっぽこ小児科医によるへっぽこ育児ダイアリー+α。父親と小児科医の視点から日本の医療と世相を斬って斬って斬りまくる、なんてことはなく、日々思ったことを綴ります。何かと大変な育児、読んでいただいた人に少しでもお役に立てれば良いのですが。。。

子ども4人を東大理Ⅲに入れることは果たして誰の幸せなのか?

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どうも、あんきろさんです。

受験の季節も大詰めですね。明日に後期試験を控えた方もいらっしゃるかと思います。泣いても笑っても今年最後なので、悔いを残さないように頑張ってくださいね。

さて、そんな受験ですが、悲喜こもごものドラマを日本中で巻き起こしている中で、昨日恐ろしいニュースが日本中を駆け巡りました。

dot.asahi.com

子どもが4人とも東大理Ⅲなんて・・・、恐怖の一家ですね。

知り合いに、きょうだい4人がみんな京大医学部(シャレではありません、念のため)というやつもいましたが、いずれにせよ恐ろしい人たちです。
一応私も受験戦争をなんとか勝ち抜いて(?)医学部に入ったわけですが(1年浪人はしちゃいましたが)、東大理Ⅲに合格するには、もちろん並大抵でない能力と努力が必要だとは思うのですが、運もそれなりに必要だと思うので、4人みんなっていうのは素直にすごいですね。

はてブのコメントもいろいろついているのですが、「すごい」と(たぶん)褒めているコメントの一方で、「このきょうだいは本当にみんな医者になりたいのか?」とか「親の自己満足じゃないのか」とか「子どもに主体性はないのか」という意見が結構あります。

確かに、いかにきょうだいとは言え、4人がみんなが同じ夢を持っているのはちょっと自然な流れとは思いにくいですし、やはりそこに親の意向が関係していないといえば嘘になると思います(たぶん)。

では、子どもを時にはおだて、時にはなだめ、時には脅して東大理Ⅲに合格させることは親のエゴなんでしょうか。
これはなかなか難しいところです。

確かに、東大理Ⅲに入るためには、高校までの青春時代のいろいろなものを犠牲にして勉強しなければいけないと思いますし、その中にはその時代にしか経験できないものもあると思います。
その一方で、勉強をがんばって日本の最高学府の最難関学部に合格したというのもその時代にしかできない経験です。しかも、ごく一部の限られた人にしか経験できません。
子どもを甲子園球児にしたくて、きょうだい全員を野球の強豪校にぶちこむ親というのはそれほど多くはないにせよある程度いると思いますし、それと同じといえば同じです。
おそらく、一学年あたりで考えると、なんらかのスポーツで日本一になった人数と東大理Ⅲの合格者であれば、理Ⅲの合格者の方が少ないんじゃないでしょうか。
彼(彼女)らは「東大理Ⅲですが、なにか?」と言えるのです(実際にそんなことをいう人がいるのかどうかは知りませんが)。何かで非難されても、心の中で「理Ⅲ受かってから言えよ!」と相手を罵倒できるのです(罵倒しているかどうかは知りませんが)。
大学受験という限られた世界ではありますが、頂上からしか見れない景色を見ているというのは、得がたい経験であることは間違いありません。
まぁ、その経験がその人の人生にとって必ずしもいい方向に働くかというと、そうとは限らないのも難しいところですが。

また、「きょうだいみんな医者になりたいのか」という疑問に対しては、東大のシステムとして進振りというのがあり、必ずしも理Ⅲに入ったからと行って医学部に進学しなければいけないわけではないので、入学して1年と少しは猶予期間があると言えばあります。
理IIIから医学部以外に進学する人が実際どれくらいいるかはよく知らないですが、とりあえず何をするにしても、合格できるのであれば理IIIを選択して悪いことは確かになさそうです。京大の医学部ではこうはいかないので、そこまで考えて理IIIを選んでいるのであれば理にかなった選択です。

すでに理Ⅲに入学している3人は、どのような進路を選択しているのでしょうね。インターネットをちょっと見た感じではよくわかりませんでした。
赤の他人が心配することではありませんが、理Ⅲに入ったんだから医学部という安易な選択をしていなければいいのですが(もちろん、初めから医者になりたくて理Ⅲを選んでいるのであれば、それこそ赤の他人がとやかく言うことではないのですが)。

いずれにせよ、4人のお子さんはいろいろ注目されて大変でしょうね。特に今回合格された長女さんにおかれましては、プレッシャーは並大抵のものではなかったことは想像に難くありません。それをはねのけて合格されるのですから、本当にすごいと思います。
そんな経験なかなかできないでしょうから、そこまで考えてこういう状況を作っているのであれば、このお母さんはすごい教育者だと思います。

ただ、この話が成り立つのは4人とも東大理Ⅲに合格できたからであって、誰かが合格できなかったりしたら途端に非常に微妙な話になってしまうのが怖いところです。

この家族に関して言えば、子ども4人を東大理Ⅲに入れることは家族みんなの幸せなんだと思いますが、少しのずれでとたんに悲劇になってしまうこと(しかも基本的にはそうなってしまう可能性が極めて高い)ということが、このエピソードに反発する人が多い理由なんでしょうね。
ほんと、うまくいったから良かったですけど。

いろいろな2世の世界でよくあることですが、親とそれを受けた世間からのプレッシャーほど、それに応えられない人間にとって辛いものはないでしょうし。

なんにせよ、人の家の中の話なので他人がとやかく言うことではないのですが、お母さんの教育方針は正直どっちでもいい(こんなこと言ってすいません)ので置いといて、親と周りの過大な期待に応え切った4人のお子さんは、賞賛こそされ、非難されたり憐れまれたりする謂れは全くないことだけは間違いないと思います。